あのピアニストで聴いたラフマニノフ三番
どちらかというと第二番の協奏曲の方が知られている、ラフマニノフのピアノ協奏曲。
個人的にはこの第三番が好きなのだが、たまたまラジオで流れていてそれを聴いて演奏者に
ついて考えさせられたのでちょっと書いてみる。
私の持っているラフマニノフの第三番は(ピアノ協奏曲と言わなくてもだいたいこれで
通じてしまうのはラフマニノフの交響曲というのをイメージしにくいからだと思う)
ホロヴィッツ演奏のCDである。外盤で録音状態も決して良いとは言えないが、
いつものように、戦慄してしまうような演奏を聴かせてくれる。
今回たまたま聞いたのは同じウラジミールという名前を持つ、アシュケナージである。この人は
もとはピアニストとしてぶいぶい鳴らしていたが、いつしか指揮者に転向し、ピアニストの頃同様、
世界的に成功を収めている才能溢れるひとだ。
この第三番の協奏曲は、優れたピアニストでもあった作曲者のラフマニノフの初演で世に出た
曲だが余りにも難しすぎて世間に知られるに至らなかったのを、極限に近いと思わせられる位の
技術を持つホロヴィッツが好んで演奏するようになり知名度が増したという説明を
ラジオでもしていた。
技術も要求され、どう表現するかが難しい楽曲であるのは間違いないのだが、ラジオで
耳にしたアシュケナージの演奏は、若干25歳のピアニストの演奏とはとても思えない
出来栄えなのだ。
このひとの演奏を特に好きなわけではないのだが、非常に達者なピアニストという印象がある。
技術は勿論、音楽的に聴衆がここでこうしてくれたらきっといいだろうな、と無意識に
思うようなところを上手い位ついてくる、大変にツボを心得ているというピアニストだと
考える。
その片鱗は既にチャイコフスキーコンクールなどいくつもの権威あるコンクールで優勝を
さらっていた若きアシュケナージに既に表れているようだ。
上手いひとだと前から思ってはいたが、若々しいのも感じるけれど、本当に「達者なピアニスト」
なのだなあと感心した。
こういう、自分では持っていない、恐らくわざわざ聴かない演奏を聴けるのがラジオの良い
ところである。
もうすぐ第三楽章も終わってしまうが、聴いて良かったと思える演奏だった。
面白いのはだから自分がアシュケナージを好きという訳ではないところだ。こういう面白さが
あるからクラシックを聴くのは止められないのかもしれない。