2016年12月23日
【メフィスト・ワルツ】壮絶なまでのホロヴィッツの演奏
実のところ余り聴かない作曲家であるリストの作品、「メフィスト・ワルツ」。
もう何年前になるか覚えていないが、この曲をホロヴィッツで聴いた時、まさに
度肝を抜かれた思いがした。
魂を吸い取られる感覚を、このピアニストの演奏を聴いておぼえることたびたびだが、
これはまた、慄然とするような種類のものである。
メフィストとはゲーテの「ファウスト」に登場する悪魔、「メフィストフェレス」のことではなく、
レーナウという詩人の「居酒屋の踊り」を「メフィスト・ワルツ」と呼ぶところから来ている。
管弦楽曲でもあるが、独奏曲として広く知られている。
この、まさに「デモーニッシュ」な楽曲が、ホロヴィッツの超絶技巧と変幻自在な音色で
あたかも彼自身が「メフィストフェレス」であるかのように聴くものの魂を揺さぶり、そして
惹きつけるのだ。
私が最近聴いているのは、最後にすさまじいほどの拍手が入る演奏だ。
聴いている最中、まさかこれがコンサートで奏されているとは思えないほどの出来栄えで、
ただただ圧倒されてしまう。
演奏者によって曲というものがこれほど「形を変えて」しまうのだとつくづく思わされる
そんな演奏のひとつである。