ウルトラセブン
高校の時の音楽理論の授業には二種類あって、一つは和声や理論そのものを習うクラス、もう一つは、
先生によったようであるが、何かテーマを絞って、音楽というものについて延々教わるという、生徒
の側のひとりとしては、余り良く分からない趣旨のものであった。
最も、出来の良い生徒ではなかったのもあるのかもしれないが、音楽史の授業もなかなか古典派まで
も進まないスローペースにめげてしまった記憶があるから、授業そのもので内容を覚えているのは余り
無い。メインがドイツリートであったような気はするのだが、出来の良いクラスメイトに聞けば覚えて
いるかもしれない。
その授業を教えていた先生は、ウルトラセブンの音楽を書いた作曲家であったのだ。
当時、君たちには熱意というものが無い、今の音楽教育は…といった熱弁もふるっておられたが、
学業には大抵熱心ではない生徒たちには馬の耳に念仏といった所であったろうと思われる。
ある年代の、特に男性であれば、リアルタイムか再放送かで、ウルトラセブンをご覧になったこと
があるのではないかと思われるし、あの主題歌、ドソー ミドー ソミー ドソ、ドソ、ドソ♪と
いう出だしを耳にされた事があると思う。私も知っていた。
挿入音楽も担当しておられ、DVDのどれかに、ご本人が登場し、色々語っている姿を拝見し、あれから
随分経つのにお変わりないなあと大人になってウルトラセブンを観た自分は感慨ひとしおであった。
一度、同級生数名と、成城の仕事場に招かれ、手ずからの料理をごちそうになった。何故そんないきさ
つになったか全く記憶にないのだが、こんな高級住宅街に三階建(!)の仕事場…グランドピアノは二
台あったし、なんだか、自分の普段を考えると、こそばゆかったのを思い出す。
ウルトラセブンの音楽を書き、授業では、例えばシューベルトのリート、糸を紡ぐグレートヒェンなど
について、この曲の伴奏はグレートヒェンの心臓の音を表現している…などと講義されていたのであ
る。確か、亡命によってホロヴィッツは音楽に深みを増した、などとおっしゃっていたな、と思い出し
た。
久しぶりにウルトラセブンのDVDでも観て、音楽にも耳を澄ますのも悪く無いかな、と思った春の
一日である。