ドナドナ
この曲の歌詞は日本語訳されていて、お馴染みではある。
たまたまだが、ヴァンガード・レコードでデビューした、ジョーン・バエズの
ドナドナを聴いた。
フォークをメインに音楽活動をおこなっている彼女は、ピアノ、ギター、ウクレレなども
上手く、ボブ・ディランの曲もリリースしたりしているようで、私は初めて聴くミュージシャンで
あったが、声が良くて、歌のたいへんに上手い歌手であると、ドナドナを聴きながら思った。
ああるうはれたあひいるうさがりい いいちいばあへつづうくみちい
これが日本語の歌詞で歌った場合のドナドナである。バエズはこれを英語で歌っていたが、
音は
♯ファーシー♯ドレミー♯ファーシー♯ドレミー ♯ファーシーソー♯ファミレーミミ♯ファー
となっていた。
これはロ短調であるが、わたしの感覚では、二短調が似合う曲だと思っている。
それはさておき、久しぶりに、しかもプロがじっくり歌い込んだドナドナを聴き、
何気なしに、この曲の成り立ちのようなものを調べて見ることにした。
そこで、驚きとともに、確かにそういう歌詞ではあるのか、と思ったことであった。
この曲は1938年にDana Danaとしてイディッシュ語でかかれた歌であり、
内容は日本語の歌詞と大体同じようで、牧場から市場へ売られていく子牛を歌っている。
とウィキペディアにあった。
こうなると想像がつくが、ユダヤ人がナチスによって強制収容所に連行されていく
様子を反映した反戦歌であるとの説があるという。
ところが実際には、書かれたのはホロコースト以前の1938年、したがって、この
描写がユダヤ人迫害の歌でもあるというのは、史実とは矛盾しているのだそうだ。
しかしながら、長い間、反ユダヤ主義は主にヨーロッパでは存在していたのであり、
捉え方としてはありそうな話である、そんなオチであった。
どちらにしても、ホロコーストというのは凄惨な、しかしながら、歴然として起こった
歴史のなかでの出来ごとであった。このドナドナに、それをなぞらえるのは分からないでもない。
そのことを知ったあともうひとたび、バエズのドナドナを聴いた。
過剰な感情を込めずに歌う、バエズの力強く、良く通る声は、先ほどとは色彩を変えて、
響くように思われた。
画像はコローの牛舎の牛である