靴の中の珍客

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つつじも最盛期を迎えて、まさに花ざかり、といった感がある。

街路樹や庭にあるさまざまな色合いのつつじを観賞していると、ぶんぶんという羽音も賑やかに、

ミツバチが、花から花へ、蜜を求めて飛び交うのも見られる。

脚に、丸めた黄色い花粉を付け、せわしげに、飛ぶのを見ているのは悪くない。

しかし、虫が苦手で無いという人でも、ハチなどは苦手、という事があったりする。

何かあると刺される。そんな懸念があるからだろう。

確かに、同じ「刺す」にしても、藪蚊に刺されるのとは勝手が違う。

ミツバチは捨て身である。外敵を刺すことは自らの命を懸けることになるのだ。大きな敵には

数で対抗したりもする。

まだ、幼い頃、小さな赤い、布製の靴を履いていたのだが、ある日、縁側から庭に降りようとした

時の事である。いつでも庭で遊べるように、玄関から縁側に持ってきておいたその靴に足を入れた

とたん、ちくっとした。

「痛い」と言ってすぐ靴を脱いだ。靴には何も無い。恐る恐る、自分の痛む足を見たら、ミツバチ

が、足の裏を刺していた。

何故ミツバチが靴の中にいたのかは分からない。

とにかく誰かにミツバチを足から取って貰ったのは確かだが、そのことを詳しくは覚えていない。

ポカポカ陽気のある春の日に、靴の中にいたミツバチに刺された、それだけを覚えている。

その後、ミツバチに刺されることは無かったが、刺された時の、ちくっと来た記憶は残っている。

まだ6歳か7歳頃のことだ。

ミツバチは今日も賑やかに、花の周りに飛んだりしているのだろう。

日向にある、誰かの靴の中に入ったりすることの無い様に、と思う。

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