2014年5月6日
靴の中の珍客
つつじも最盛期を迎えて、まさに花ざかり、といった感がある。
街路樹や庭にあるさまざまな色合いのつつじを観賞していると、ぶんぶんという羽音も賑やかに、
ミツバチが、花から花へ、蜜を求めて飛び交うのも見られる。
脚に、丸めた黄色い花粉を付け、せわしげに、飛ぶのを見ているのは悪くない。
しかし、虫が苦手で無いという人でも、ハチなどは苦手、という事があったりする。
何かあると刺される。そんな懸念があるからだろう。
確かに、同じ「刺す」にしても、藪蚊に刺されるのとは勝手が違う。
ミツバチは捨て身である。外敵を刺すことは自らの命を懸けることになるのだ。大きな敵には
数で対抗したりもする。
まだ、幼い頃、小さな赤い、布製の靴を履いていたのだが、ある日、縁側から庭に降りようとした
時の事である。いつでも庭で遊べるように、玄関から縁側に持ってきておいたその靴に足を入れた
とたん、ちくっとした。
「痛い」と言ってすぐ靴を脱いだ。靴には何も無い。恐る恐る、自分の痛む足を見たら、ミツバチ
が、足の裏を刺していた。
何故ミツバチが靴の中にいたのかは分からない。
とにかく誰かにミツバチを足から取って貰ったのは確かだが、そのことを詳しくは覚えていない。
ポカポカ陽気のある春の日に、靴の中にいたミツバチに刺された、それだけを覚えている。
その後、ミツバチに刺されることは無かったが、刺された時の、ちくっと来た記憶は残っている。
まだ6歳か7歳頃のことだ。
ミツバチは今日も賑やかに、花の周りに飛んだりしているのだろう。
日向にある、誰かの靴の中に入ったりすることの無い様に、と思う。