2014年1月5日
午年
明けて午年、2014年を迎えた。
今年はもう少しブログを書いていきたいと思う、年始の気持ちではある。
昨日、久しぶりに聴いた曲があって、それが改めてスゴいと思ったのだが、演奏者はホロヴィッツであ
る。いわずと知れた前世紀を代表するピアニストの一人であるが、音楽を専攻する人々の中、彼の事を
知らない生徒がいる、と兄弟子が嘆いているのを、ある誌上で読んで、自分も驚いたのを覚えている。
曲のことはまた別の機会に書くとして、ホロヴィッツについてちょっと触れてみたい。
まず聴いて驚くのは、その音の素晴らしさだ。ただ美しい、というのではない、魔力というか、人を蠱
惑するというか、私は聴くたびに魂の一部を少しずつ吸い取られて行くような、そんな演奏をする人だ
と思っている。驚くべきピアノタッチ、自分に相応しい選曲が出来るひとであること…
例えば、私がいずれ書いてみようと思っている曲が入っているアルバムに、サン=サーンスのDance
macabre(死の舞踏)という曲、ホロヴィッツがピアノ用に編曲したもの、それが入っているのだが
このアレンジ版を初めて聴いた時、度肝を抜かれたのを思い出す。本当にすさまじいばかりの、
多分サン=サーンスは中世の黒死病、コレラの大流行の時の、死の舞踏をテーマにしたのだと記憶して
いるが、病気の恐怖から人々がついに踊りだした、という話が底に流れているのを感じたり、このピア
ニストの強烈な個性とピアノの技術の最高峰の物を聴くことの出来る、素晴らしい録音なのだ。
ホロヴィッツを短い文章で語ることはとてもじゃないけれども出来ない。年始ののんびりした気分
をちょっと糺すような、そんな気持ちが芽生えたのであった。