2014年3月23日
一匹の猫
一匹の猫がいる。
中東のほうの国だろうか。それとも北アフリカのほうだろうか。
白い建物が青空にまぶしく見える、そんな街の一角にひとびとの住居がある。
一本の路地の右手に、何かの屋台のような小さな店があり、左手には老人が二人、テーブルをはさんで
腰をかけ、一人は新聞を広げ、もう一人の恐らく友人でもあろうか、彼に何か話しかけているようだ。
静かで、穏やかで、豊かな空間。
二人の老人の少し向こうには、若者がせわしなげにどこかへ行こうとしているのが見える。
老人たちの足元に、一匹の猫がいる。
キジ猫で、おとなしく座って、新聞を手にした老人の足元で、彼らを見つめている。
その写真を目にした時、さまざまな事が脳裏によぎった。
何度もその写真を目にしたが、いつ見ても、その空間に目も気持ちも惹きつけられ、また、その老人と
猫に、会ってみたくなるのだ。
彼らと猫は、私が羨望してやまない何かを、いともやすやすと、日常の一コマで手にしている。
一匹の猫は、私の憧れでもある。
写真は岩合氏のひめくりカレンダーによる。