2014年8月3日
バッハの平均律
良く例えられることだが、音楽の旧約聖書と呼ばれるのが、この、バッハの平均律クラヴィーア
曲集である。
ニ巻からなり、前奏曲とフーガで一曲、それを24の調性で書いているので、全48曲になる。
このような説明ではなんのことやら、だろう。
一曲を取り上げると、グノーのアヴェ・マリアという曲があるのだが、それが、このバッハの
平均律の第一巻、第一曲のハ長調のプレリュードを「伴奏にして」生み出されたメロディーで
作られたということを書いてみる。
ほぼ分散和音のみで構築されたこのプレリュードに、自分の頭に浮かんだであろう旋律を
そこに重ねて発想を得た、グノーもまた、優れた作曲家である。
どちらかというと、バッハの平均律は、気楽に聴くといった姿勢の音楽ではないと思う。
鍵盤楽器をやる人間にとって、非常に難解なこの音楽はしかし、錆びついたりすたれたり、
などということとは無縁の、音楽を人間が聴く限り聴かれ続かれるであろう、そういう類の
音楽だと自分には思われる。
バッハの天才が細部にまで行き渡ったと言おうか、とにかく、深く静かに心の琴線に触れて
止まない、音楽である。