ギターへの憧れ
楽器の中で、もし可能だったら是非始めたいのが、ギターである。
他の楽器にも憧れはあるけれど、音を出すだけでも大変なヴァイオリンや、
音の非常に通る管楽器などは、練習場所に困りそうだし、ある程度弾いても差し支え
ないのはギターではないか、そうも思うのだ。
そしてまた、ギターの音は、優しい音だというのが大きい。
もちろん調子によっては激しくもあるし、表情を付け、緩急をつければまた変わる、
それでも、優しくやわらかな音の楽器と思える。
それをのんびりとつまびいてみたい。
それがここ数年の願望である。
取り敢えず弾くことが出来ないので聴きながら、憧れは胸におさめている。
ギターを弾くことが出来ずとも、誰の作曲かを知らずとも、大変知られた
ギター曲のひとつである「アルハンブラの思い出」を、今、
イエペスの演奏で聴いている。
ミー レドー レミー という哀愁漂う、揺れるようなメロディのこの曲は、
知られているが故に、そしてテクニック面だけではなく…「聴かせる」演奏が難しい
と思われる。
例えばピアノであれば、「エリーゼのために」、というこれまた良く知られた曲があるが、
これがバガデルという踊りの曲であることも知られていないようだが、
ピアノを習い始めて数年くらいで発表会で弾きたい曲、のひとつに日本ではなっている。
しかしながら、この手の曲を「音楽」として聴かせるのはかなり難しい。皆が知っているメロディ
という要素は案外大きいようでもある。
ただ単に、表情をつけ、ミス無く弾く、そんなことなら大抵は出来る。その先の先にどうやって
辿りつけるか、それが問題なのだ。
横道にそれたが、それと同じことがこの「アルハンブラ」にも言えそうである。
それを見事に弾いた録音で、幸い私はこの曲を楽しむ事が出来るのだが、どこが
見事であるかと言うと、歌でいえば節、メロディの部分の、特にテンポの「間合い」が
優れていると思うのだ。凡庸な弾き手には出来ないことをイエペスは簡単にやっているように
思われる。
歌の間合い、ちょっとした、ため、のようなものを、不自然になることなく、音楽の流れを
止めることなく、ふっと入れている。凄いと思う。
これを聴かずしてアルハンブラを語るなかれ。などと言いたくなってしまう。
私の聴いているのは、ドイツのレーベル、グラモフォンの物である。他にも
親しみやすい、小品を集めたお奨めアルバムである。
聴いてみるといい曲だなあとしみじみする。
しみじみの大半はイエペスの演奏から来ていて、曲は勿論見事なのだが、きっとイエペスで
なければここまで褒めることも無いと思う。
やはり演奏の大切さをこういう録音で思い知ることになる。
奏者のイエペスの事はまた書いてみたい。